~本当の豊かさを求めて~ 東京と鴨川で二拠点生活をされている神向寺さんの里山ライフ
目次
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この記事を読んでいるあなたは、漠然と「二拠点生活にトライしてみたい!」といった気持ちを抱いているのではないでしょうか。
今回の記事では、東京と千葉県房総半島にある鴨川市で二拠点生活をされている神向寺さんを取材してきました。
神向寺さんの二拠点ライフから、あなた自身の理想のライフスタイルを叶えるヒントが見つかると思います。
ぜひ、最後までお読みください!
神向寺さんのプロフィール
1952年東京生まれ。建築設計士として東京を拠点に長年活躍。
アトリエ系設計事務所で修行後に独立。
2011年より棚田オーナー制度をきっかけに鴨川と出会い、里の美しさに一目惚れし土地を購入。2012年からセルフビルドでオフグリッド小屋を建設し、以来東京と鴨川で二拠点生活をしている。
二拠点生活を開始された背景
記者:さっそくですが、二拠点生活をされようと思った背景は何だったのでしょうか?
神向寺さん:昔から、田舎に拠点が欲しいと漠然と思っていました。そんなとき、たまたま出会った老夫婦がいたのですが、「全国の田舎をめぐり最終的に定住するお気に入りの土地を何年も探し続けている。」と仰っていました。その話を聞いて、あと何年探し続けるのだろうか。この人たちが健康で元気に過ごせるのはあと何年なんだろうと…。
神向寺さん:そう考えると、私も行動しなくてはと思い二拠点生活を実現するために動き出しました。
記者:数ある地域の中でも鴨川を選ばれた理由は何だったのでしょうか。
神向寺さん:はじめに鴨川を訪れるきっかけとなったのは、鴨川市にて2000年から発足した棚田オーナー制度(※1)というものを知ったことでした。棚田オーナー制度をきっかけに鴨川を2、3度訪れたのですが、そのとき見た自然に感動したんです。漠然とあこがれていた里山のイメージにピッタリ合っていました。そして、直感で土地を購入しましたね。また、鴨川は東京圏から一番近い棚田百選に選ばれています。
※1:棚田オーナー制度とは・・・所有者の高齢化や後継者不足などで、耕作が放棄される棚田の保全策として発足。田植えから稲刈りまで、一連の作業を通じた交流で、都市民と農村のコミュニティ融合を図っています
鴨川市での里山ライフの魅力
記者:鴨川エリア以外で気になっていたエリアはありましたか?
神向寺さん:伊豆や山梨は山も川もきれいな里山がありました。でも、海が近くにないことがマイナスポイントでした。妻は新鮮な海産物が好きなので、候補から外しましたね。鴨川市は里山ながら、海も近く内房の海へは車で15分、外房の海へは25分で移動できます。この山と海という豊かな自然環境が、東京圏から車で約1時間30分で行ける距離にあるんです。
記者:近くもなく遠くもない程よい距離感に鴨川市はありますね。鴨川までの道中の運転も負担には感じませんでしたが、遠出の旅行をした気分になります。
神向寺さん:鴨川での暮らしのテーマはオフグリッド(※2)な生活を送りたい、不便を楽しみたいという2点です。都会では自分の生活を成立させている衣食住全てを貨幣によって購入しています。自分の生活がある意味、「外注のみ」で成立していることに居心地の悪さを覚え、そこから少しでも脱却し自力でできる部分を増やしていきたいと思い、鴨川で楽しみながら実践しています。
記者:なるほど。理想の里山像にぴったりの鴨川で、自然と共生するような生活スタイルを送っているのですね。
神向寺さん:私が4年の歳月をかけて建設したオフグリット小屋は、生活に必須のライフラインをほとんど必要としない工夫をしています。
神向寺さん:例えばこの太陽熱温水器。日中のあたたかい日光も余すことなく使えるよう太陽光を熱として利用することで水を温める装置になっています。
神向寺さん:キッチンにはガスは無く、このかまどでご飯を炊いたり、加熱調理をしています。
神向寺さん:寒い日は部屋に設置した薪ストーブで暖をとっています。また、トイレは微生物のはたらきで分解し堆肥にかえるのがコンポストトイレです。外部に生活に必要なものを依存せず自力でできる部分を増やしていきたいと思っています。
※2:オフグリットとは・・・電気、ガス、水道など生活に必要なライフラインの一つ、または、それ以上を公共事業に依存せず、独立した方法で設計された建物の特徴やその生活様式を指す。また、オフ・ザ・グリッドの原義は、電力網に接続されていない状態を表す
出展:ウィキペディア
鴨川で二拠点生活をはじめて変化したライフスタイル
記者:鴨川ではどのようなことをして日々過ごしているのでしょうか。
神向寺さん:鴨川では、知人の新居の設計を手伝ったり、大工仕事、パン作り、農業、釣り等することがたくさんあります。逆に東京ではほとんどの時間を設計の仕事に費やしています。
記者:鴨川と東京では随分生活スタイルが異なりますね。なんというか、鴨川では活発に動き回っていそうな印象を受けました。
神向寺さん:鴨川でできて、東京でできないことはたくさんあるんですが、鴨川でしかできないことがたくさんあるんです。東京には、鴨川のような豊かな自然はありません。鴨川には山も海も川もすべて揃っている。鴨川でやりたいことは、山ほど思い付くし、新しくやりたいこともあります。
記者:とても私自身ハッとさせられました。東京にはたくさん飲食店やショップがあるので、東京が一番できることや楽しみが集まっていると・・・。ただ、それはある一つの側面だけに限った話で、綺麗な空気や海、自然環境はその土地でしか享受できないものですね。
神向寺さん:そうですね。東京は仕事くらいしかすることがないんですよね(笑)。あと、東京でしかできないことは、ウインドウショッピングなどの街歩きぐらいじゃないですか。でも、月に何度もするもんでもないので、やっぱり鴨川での暮らしが良いですね。
記者:二拠点生活をこれからも続けていくのでしょうか。もしくは鴨川へ移住するのでしょうか。
神向寺さん:ゆくゆくは鴨川へ移住したいと考えています。そのためにも、今の鴨川の自宅横に新居を建てる計画をしています。来年をめどに完成させたいと思っています。新居が完成したら妻も、鴨川での暮らしをメインに考えてくれるのでは?と思っています。
里山ライフで新たに生まれた人間関係やコミュニティ
記者:東京と鴨川で二拠点生活をはじめて11年目になると思うのですが、他の地域に興味が移ったりはないのですか。
神向寺さん:2011年からいまで約11年目。まったく飽きは無いですね。それは、鴨川で新たに生まれた人間関係がとても居心地が良いからです。鴨川は移住者も多く、東京での人間関係とは全く異なるかたちで形成されていると感じます。
記者:なるほど。詳しく聞かせて下さい。
神向寺さん:具体的に言うと、地方での人間関係には一切利害関係が無いのです。東京では利害関係がある。これまで、東京で仕事を通じて関わった人たちと仕事を引退して関わることはやっぱり少ないです。もちろんいないわけでは無いですが。
神向寺さん:田舎の人間関係は「中学校のような人間関係」という表現がぴったりです。本来の人間関係はこういうものだと気づかされました。例えば、鴨川で知り合った方とFacebookを交換したら共通の知り合いが50人いたなんてことが。そのくらい、地方の人間関係は密で、知れば知るほどおもしろいんです。知人の知人が知り合いだから、変に喧嘩したりできないでしょう?鴨川に来て知り合いが何百人もできました。利害関係のないフラットな関係がとても心地良いんです。
記者:二拠点生活するにしても、移住するにしても、その土地に居心地の良いコミュニティがあるか否かはとても重要なポイントだと感じました。
神向寺さん:そうだと思います。鴨川へ移住された方は個性あふれる方ばかりです。お互いで助け合いながら、年齢や性別、背景など関係なく関わりあえます。
鴨川での暮らしが建築への考え方に影響を与えた
記者:少し話を変えて、これまで建築に携わってこられたと思うのですがどういった建築物をメインで建てられていたのですか。
神向寺さん:いわゆるオフィスビルのようなものから公共の施設など幅広いものを設計していました。
記者:鴨川で木造の建造物を中心に設計されているので、これまでも木造建築に精通しているのかと思いました。鉄筋系の建造物が多かったのですね。
神向寺さん:はい、この鴨川の住居は木造で更地から自分で0から建設しました。近代建築に憧れ、建築設計の世界に飛び込んだのですが、鴨川で木造建築の設計や建築に携わり、木造建築のすごさ、奥の深さ、そして技術の高さを再認識しました。持続可能性をキーワードに建築を捉え直すきっかけになりました。
記者:鴨川での生活がご自身の建築という仕事に対するの考え方にも良い影響を与えたのですね。設計の仕事は東京ではなく鴨川でも問題なくできるのでしょうか。
神向寺さん:はい、建築設計という仕事は、昔は手書きが主流でしたので、目が見えなくなったら仕事にならず引退というのが一般的でした。現在はCADがあります。PCがあればどこでも仕事ができます。リモートでお客様とも難なく会話できるので便利になりました。
二拠点生活の交通費や初期コストについて
記者:どのくらいの頻度で鴨川へいらっしゃるのですか。
神向寺さん:週に3日間は鴨川にいるような生活です。
記者:鴨川への移動は自家用車でしょうか。
神向寺さん:そうです。車で新宿にある東京の拠点からおよそ1時間30分ですので移動もそこまでストレスではないですね。
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記者:そのペースで鴨川へ移動していると、年間でどのくらいの交通費になるのでしょうか。
神向寺さん:ざっくり年間100万円です。週に1度鴨川を往復する際のガソリン代や高速料金、あとは都内で借りている自家用車の駐車場代を含んでいます。鴨川の駐車場代は0円ですが、都内はやはり高いですね。
記者:ちなみにこちらのオフグリッド小屋の総工費はどのくらいでしょうか。
神向寺さん:こちらの小屋はざっくり300万円です。屋根と床のコンクリートはプロへ依頼しました。その他は鴨川へ移住された方にも協力してもらいながら建築しました。
記者:移住者の間で相互扶助の精神が息づいているのですね。
移住する際に考慮するべきこと
記者:じっくり二拠点生活をした結果、移住するうえで気を付けるべきポイントなども見えてきたのでは無いかと思うのですがその点はいかがでしょうか。
神向寺さん:地元の方とのコミュニケーションには気を付けています。もともと住まれていた方への配慮は怠らないように。また、若い方は消防団に入ることを求められるようですので、事前に調べる必要はありそうです。
終わりに~取材を通じて~
東京と鴨川での里山ライフを送っている神向寺さんの取材を通じて人と人とのつながりを強く感じ、相互扶助の精神の大切さに改めて気づかされました。「本当の豊かさ」は居心地の良い人間関係や、その土地に住む人々との交流や支え合いを通じて実感するのかもしれません。
移住者を受け入れる寛大さのある地域や、すでに移住者と地元の方とのコミュニティがある地域には移住者が集まることにもうなずけます。
また、神向寺さんの長年培ってきた建築に対する考え方や価値観を変えた鴨川での里山ライフ。仕事の面にも良い影響を与えてくれそうですね。
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